

相続トラブルが起きるのは、上図の「B 遺産分割協議」の段階ですね。
各相続人が取得する割合は、例えば相続人が母と子ども2人の場合、母が2分の1、子どもは4分の1ずつというように民法に定められており、これを「法定相続分」と言います。
しかし、各相続人の具体的な取得分は、法律で定められている割合と必ずしも一致しなくてもよく、実際には社会常識に反しない限り、相続人間の自由意思に基づいて協議によって決めることになります。
この協議が成立しない場合または協議ができない状態にある場合には家庭裁判所の調停・審判によって具体的な取得分が決められることになります。
相続財産は預貯金や有価証券だけではなく、不動産の所有権、賃借権、貴金属や書画・骨董などの美術品、家具などの動産類まで多岐に及びます。
相続財産が金銭など分割可能な物、又は換金が容易な物であれば、もめ事はそれほど多くないかもしれません。
しかし、相続財産に不動産が含まれていた場合(多くのケースが当てはまると思われます)、その不動産の価値をいかに見るかで利害関係が錯綜し、トラブルの原因となってしまうのです。
相続トラブルの具体例~「不動産の価値」は重要な要素具体的に例をあげてみましょう。
「父の財産を相続するのに、法定相続人が長男Aと次男Bの2人」だったとします。
「相続財産は不動産のほかに預貯金が2000万円」です。
「法定相続分は子2人の場合は2分の1ずつなので、預貯金はAとBがそれぞれ1000万円取得することにした」とします。
では、不動産はどうするのか、という問題が生じます。
一番簡単な方法は、AとBが持ち分を2分の1ずつにして共有名義で相続する方法です。この方法であれば、公平なのでトラブルは起きません。
ただ、相続した後で実際に不動産を使いたい、処分したいというようなことになった場合を考えると、問題を先送りしているだけとも言えます。
次に考えられる方法は、A(若しくはB)が不動産を相続して、不動産の価値の2分の1に相当する額を、金銭でB(若しくはA)に支払うというやり方です。
ここで、トラブルの原因になるのが、「不動産の価値」です。
仮に相続したのがAだったとして、不動産を相続しても現金収入はないわけですから、不動産の価値を低く見た方がAにとっては得ですが、逆に現金をたくさんもらいたいBにとっては、不動産を高く見た方が得だということになります。
では、遺言があればトラブルは避けられるのでしょうか。
必ずしもそうではないという例を紹介しておきましょう。
先ほどと同じ設定で、父が長男Aにすべての財産を残したいという遺言を残して死亡したとします。
法定相続人はAのほかに、次男Bがいますが、遺言のとおりにすると、Bは何ももらえないことになります。
しかし、法定相続人には遺留分というものが担保されているので、れっきとした法定相続人であるBは自分の遺留分を請求することができるのです。
具体的には、遺留分減殺請求という訴訟を起こさなければなりませんが、何ももらえないという遺言にそのまま従わなければならないということではありません。
さて、この遺留分減殺請求という訴訟においても、相続財産に不動産が含まれていれば、その「価値」を的確に把握することが必要になるのです。
ところで、相続財産の価値はいつを基準にして決めるのでしょうか。
相続税の申告は、時価評価が原則ですが、「時価」の基準になるのは相続開始時です。
では、遺産分割の場合はどうでしょう。相続開始時の時価を基準にして財産を分割するのでしょうか。
ここで注意しなければならないのは、実際の相続開始から遺産分割にいたるまでには、長い時間がかかってしまう場合が少なからずあるということです。
したがって、遺産分割の場合には、実際に財産を分割する時の「時価」に基づいて分割を行うのが合理的であるということになります。
それでは、不動産の評価をどうするのかということになりますが、一般的には以下に挙げる評価額が使われているようです。
※地価の相場を知りたい場合は、国土交通省HP「土地総合情報ライブラリー」公示地価、基準地価なども参考にできる。
①固定資産評価額及び②相続税評価額は、その年の1月1日時点を基準に算出されており、その後の地価変動は反映されていません。
また①と②は課税額算出のための評価額なので、時価よりは低く算出されています。
したがって、遺産分割時の評価額として最も適切なのは③時価ということになりますが、この「時価」を求めるために、不動産鑑定評価が重要な役割を果たすということになるのです。
